《 分かりやすい津波ハザードマップを目指して 》
横須賀市の公式Webサイト【津波からの避難場所を検討する】のページには、
―――――以下引用―――――
『津波から命を守るためには、一人一人がいざという時に迅速に高台へ避難できるよう、普段から「自助」の取り組みをしておくことが大切です。皆さん一人一人に、普段生活している場所が津波の影響がない安全な場所なのか、安全でなければ、どの場所にどのようなルートで逃げることが最善なのか、そういったことを考えていただくため、横須賀市では東日本大震災以降、次のような取り組みをしています。是非ご確認ください。
津波ハザードマップの配布
標高マップの公開
標高表示板の掲示
―――――以上引用―――――
とあります。
そこで横須賀市の津波ハザードマップを良く見てみると、 (下図の凡例配置等は編集しています)
横須賀市津波ハザードマップは市役所・各行政センターで無料配布されていますので、是非ご覧ください
1;津波浸水予想区域と高台は分かるのですが、肝心の避難経路となる道路が、津波浸水予想区域の境界線で塗りつぶされていて、よく見えない箇所が多数あります。このマップで自宅から高台までの道を辿れるでしょうか?(横須賀市津波ハザードマップ
西地区Aをご覧ください)
2;避難所と防災関連施設が何も表示されていません。本当に津波浸水して、帰る場所を失ったら避難所に行くしかないのに、その頼るべき高台の避難所がどこにあるのか、津波ハザードマップを見ても分からないのです。
3;津波浸水予想区域のランクによっては、本当にこんなに狭い範囲までしか津波は来ないのだろうか?と疑問に思う区域が多数あります。西地区では、津波警報5mの津波が海に近い標高1.7mの地点に到達しない予想区域になっている箇所もあるのです。
県内の自治体と比較して圧倒的に津波避難情報量が少なく避難経路が見難い問題を、2018年6月7日の横須賀市議会定例議会一般質問で嘉山淳平議員が取り上げた時に、市長と市長室長は、「浸水区域と標高に特化した現在のハザードマップが見やすくて最適であり、意図的にそうしている」という内容の答弁をなさいました。これでは、極端に少ない情報量や避難経路が見難い表示を問題とは認識していない今の横須賀市に、津波ハザードマップの改善をお願いしても無理だろうと思い、先ずは私たち自らが、横須賀市が推奨している自助努力として『避難情報が分かりやすい津波ハザードマップ』を作ってみよう!と決心しました。
《 市民が作る津波ハザードマップ 》
津波ハザードマップの作成作業は試行錯誤の連続となり、学んで試作してはボツにすることを何度も繰り返し、半年が過ぎようとする頃ようやく、津波防災専門家の方からも認めていただけるような形になりました。そして長井地域運営協議会
防災部会でワークショップを行っていただき、各地区からの情報や意見・要望に基づいて現地を歩いて確認し、マップに反映することが出来るようになりました。
@ 自宅や仕事場など普段生活している場所が、津波浸水予想区域にあるのかどうか?
A 津波から迅速に逃れるためには、どこの道を通ればよいのか?
B 付近の避難経路は一本だけか?複数あるのか?その距離はどの位か?
C とりあえず近い高台に逃れた後、避難所まで浸水区域を通らずに行かれる道がつながっているか?
D 避難途中で負傷したり、避難後に具合が悪くなったら、どこで救護が受けられるのか?
上記5つの疑問に応じられるような情報を出来るだけ見やすい形に表示したハザードマップが、多くの方々の御協力によって出来上がりました。
長井で津波から命を守るためのハザードマップ (原紙はA1,A2)
私たちみんなが、津波から命を守るために 3.11の教訓を忘れない!
東日本大震災での多くの犠牲を無駄にしてはなりません |
発行日は3月11日です。神奈川県が想定した9つの津波を4段階の高さで分ける横須賀市独自の方式だと、津波浸水予想区域が小さくなり過ぎてしまう恐れがあるので、、神奈川県が示す津波浸水想定図による最大津波浸水予想区域を用いて、各地で予想される津波浸水深さを7段階で色分けしました。高台にある震災時避難所や大災害時に開設予定の地域医療救護所など、防災関連施設を表示しました。避難経路となる道路は浸水区域の中も高台もはっきりと表示して、高台に上がる道は階段と坂道を区別して強調表示しています。津波が来たらマップの津波浸水予想区域はすべて浸水するという前提なので、避難所などの防災関連施設でも浸水予想区域内にあるものは表示していません。マップ上で自宅などの場所を見つけやすいように各町内会館・バス停・信号機の位置などを表示しています。居室内に貼ってもなるべく違和感がないように、できるだけ明るい色使いを心がけました。
長井地域運営協議会と各町内会を通じてA2サイズを長井各家庭に配布していただき、学校・公共施設・医療施設・商業施設など人の集まる場所にはA1サイズを配布して掲示して下さるようにお願いしています。
《 津波から命を守るために 》
このマップをみんなで見て、自宅や職場などが津波浸水区域にあるのか、高台に避難するにはどの道が近いのかを見つけて、実際にその道を歩いて確認してみた上で、自宅や仕事場などの場所に印を付けて、そこから近い高台へ上がれる複数の道に矢印を描き込んでください。それによって、この『長井で津波から命を守るためのハザードマップ』が、『我が家の津波ハザードマップ』・『会社の津波ハザードマップ』・『塾の津波ハザードマップ』・『町内会館の津波ハザードマップ』等々、皆さんそれぞれのマイ津波ハザードマップとして完成します。ぜひ目につくところに貼ってください。
その情報と体験をみんなで共有することで、家族や仲間がそれぞれ違う場所にいる時に大地震が起きて大津波警報が発表されても、『あの人は必ず自分で避難する』と信じあえる信頼感を築いてください。一人では避難できないという困難な状況にいる方も多いと思いますし、それこそが『共助』として取り組むべき課題と認識しています。それでも先ずは出来る事を出来る人が一歩ずつ進めていくことが、少しでも多くの人が津波から命を守るために必要なことだと考えます。
《 御礼と御願い 》
最初は頼り無げに始まった一歩の【自助】が『長井で津波から命を守るためのハザードマップ』として形になり、それが長井全域に広がり【共助】に成りつつあります。これは多くの皆様の御協力の賜物だと心得ます。
津波の最新知識を御伝授くださいました研究者の皆様、マップ作成に的確な助言をくださいました津波防災の専門家の皆様、マップ作成を決意せざるを得ない答弁を下さった横須賀市長様・市長室長様、マップ作成に必要な情報をご提供くださいました横須賀市職員の皆様、津波ハザードマップに関する話に耳を傾けてくださいました横須賀市議会議員の皆様、長井地域運営協議会 防災部会はじめ長井の皆様、
御協力ありがとうございました。心より御礼申し上げます。
津波から命を守るハザードマップの活動はこれで終わりではなく、横須賀でひとりでも多くの人が津波から命を守れることを願って、出来る範囲で続けていきたいと考えておりますので、どうか今後ともご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。
平成31年3月11日 (長井で津波から命を守るハザードマップ発行日)
地域の未来を考える会 WAFA (ワッファ) |
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